HOME・SITEMAP 日替わりメモ 日本におけるベル47ヘリコプターの歴史総目次

     

航空歴史館 日本におけるベル47ヘリコプターの歴史

  47G(H-13G) 47G-2(H-13H) 47G-2A

      

ベル47G型    6-1

 ベル47G型は、操縦桿の動きに連動して取付角を変えるスタビライザーを新設し、燃料タンクを左右に振り分けて増量をはかりました。この結果、飛行中の縦安定が改良され、重心移動の許容範囲が増し、航続距離も延びて実用性が大いに増しました。

    

ベル47G輸入    6-2

 ベル47Gの輸入機は、製造番号で知る限り次の2機ですが、川崎航空機工業自体が既にG型の生産を打ち切り、G-2型に移行している時期の登録であり、わざわざ輸入した理由は分りません。

製造番号 登録時ユーザー 登録記号 登録年月日 改造    備考
675 日本農林ヘリコプター JA7311 61/07/24 ナシ 96/05/02 70/04/26 松本市にクラッシュ
694 朝日ヘリコプター JA7300 61/06/13 ナシ 72/07/20  

番外 在日米陸軍のH-13H (ベル47G相当)

在日米陸軍 H-13H 94968 撮影1962/03/27 東京国際空港JAMCO前 geta−o

 

川崎ベル47G国産   6-3

 1952年発行 「川崎重工岐阜工場50年の歩み」によると、G型の初号機の初飛行は1954年12月で、以後1960年までに15機生産したとあります。しかし、下郷資料のリストを見る限りでは、下表のようにc/n184を再製したダブリを含めても12機しか確認できません。

 生産は1954年から1960年まで行われましたが、少数の生産にとどまっているのは、エンジンを換装した47G-2型の生産に移行したためと思われます。

製造番号 登録時ユーザー 登録記号 登録年月日 改造 抹消年月日  備考
1012 日本ヘリコプター輸送 JA7021 55/05/11 ナシ 95/12/08 都立航空高等専門学校に展示
1014 毎日新聞社 スワン JA7022 55/06/10 47G-2 63/05/28  
R1014 川崎航空機工業 JA7392 64/08/28 47G-2 82/06/73 JA7022を再製
1015 日本ヘリコプター輸送 JA7023 55/07/04 ナシ 63/07/11 63/06/17 北海道中標津町でクラッシュ
1016 朝日新聞社 ペンギン JA7024 55/11/24 47G-2 80/05/29  
1019 警備隊 8726 56/09/07 47G-2 64/06/17  
1020 警備隊 8727 56/09/07 47G-2 64/06/17  
1021 西日本空輸 JA7029 56/05/09 47G-2 74/04/05  
1691 朝日ヘリコプター JA7301 61/06/13 47G-2 74/10/22 74/08/04茨城県でクラッシュ
177 全日本空輸 JA7058 60/06/15 ナシ 63/07/17 63/03/14山梨県でクラッシュ
184 毎日新聞社かもめ JA7072 60/10/28 ナシ 64/08/06 64/08/06解体 JA7432へ
R184G 川崎航空機工業 JA7432 65/08/23 ナシ 73/02/26 JA7072を再製

 47D-1型からG型への改造は海上自衛隊の5機、陸上自衛隊の2機など9機確認できます。

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川崎ベル47G-2    7-1

 47G-2は、G型まで使われてきたフランクリン6V4エンジンを、ライカミングVO-435エンジンに切替えた形式です。その理由はよく分りませんが、フランクリンを製造していた会社の内紛か何かで供給が止まったため、同じ200馬力のライカミングにしたのかもしれません。

 ベル社では、同時にローターブレードを木製から金属製に切り替えましたが、川崎航空機工業は従来どおりの木製で通しました。木製ローターは輸入部品が粗悪なため、住友精密が和歌山県の木工技術者に作らせたものを使用していたとのことです。

 川崎の47G-2は、製造番号から見ると4桁のブラジル海軍向けの2機は、G型の製造途中でG-2型に転換して引き渡したものと見られほかは、1956年から1970年までに製造番号101〜280を加えて合計182機生産されました。

 「川崎重工岐阜工場50年の歩み」には、1956年8月G-2型の初飛行から1960年までに177機生産したとありますが、下郷リスト上では181機なので、こっちを取ります。

外国向け 15機
陸上自衛隊向け(海上保安庁移籍の2機を含む) 75機
海上保安庁向け 1機
警視庁、警察庁向け 6機
民間向け 84機
合計(陸自海保重複分を除く) 181機

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川崎ベル47G-2 外国向け   7-2

 川崎ベル47G-2は、ブラジルとビルマに15機輸出されています。
世界の航空機1957年4月号国内ニュース

製造番号 相手 ナンバー 初号機引渡日 最終号機引渡日 合計
1023〜1024 ブラジル海軍 H21〜H22 57/12/21 58/03/08 2機
102〜136 ビルマ空軍 UB-671〜682 56/08/12 58/08/14 12機
127 ビルマ地方政府 UB-683 58/07/15   1機
川崎ベル47G-2 陸上自衛隊向けH-13H

 陸上自衛隊向け H-13Hは、1957年3月16日引渡の初号機c/n110 陸自ナンバー30101から、1964年1月27日引渡のc/n271 30175までの75機で、そのうち途中で海上保安庁に2機移籍しています。保安隊→陸上自衛隊参照)

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川崎ベル47G-2  海上保安庁向け 南極観測に従事   7-4

 初めから海上保安庁向けに製造されたのは、 JA7105 1機だけで、上記のように陸自からの移籍機を含めると3機になります。移籍機は、第2次南極観測隊(1957)から第6次南極観測隊(1961)まで宗谷に搭載されて観測支援に当たったもので、第6次をもって南極観測がいったん中止されたため陸自に返還されました。

製造番号 登録時ユーザー 登録記号 登録年月日 改造 抹消年月日  備考
119

海上保安庁

JA7105 57/08/06  

73/08/02

 

南極観測のために陸自→海保→陸自と移籍された2機 

製造番号 陸上自衛隊ナンバー 海上保安庁ナンバー 海保への移籍 陸自への復帰 陸自用途廃止
121 30109 JA7106 57/09/24 62/08/11 69/02/12
122 30110 JA7107 57/09/24 62/08/11 76/04/28

 c/n121の移籍機は、陸自で用途廃止をされた後に、1969川崎航空機でKH-4型に再製され、再び海上保安庁のJA7106として活躍しました。  宗谷時代の南極観測支援航空機参照 )

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川崎ベル47G-2 警視庁 警察庁向け   7-5

 日本の警察が初めて採用したヘリコプターが川崎ベル47G-2でした。大阪府警のJA7062が松山沖全日空YS-11事故の捜索の際に全日空機と衝突して失われたほか は、全機生涯を全うしています。

製造
番号

登録記号

型式

初期配属

登 録

抹登録消

備 考

166 JA7047 47G-2 警視庁 59/10/09 76/11/13 はるかぜ1号 警視庁広報センター展示
174 JA7062 47G-2 大阪府警 60/07/25 66/11/30 あおぞら1号
66/11/15 松山沖でJA7012と衝突
178 JA7065 47G-2 警視庁 60/08/12 77/04/08 はるかぜ2号 神奈川県警 かもめ2号
218 JA7313 47G-2 福岡県警 61/09/18 78/03/11 さちかぜ 中日本航空専門学校に払下
220 JA7316 47G-2 愛知県警 61/09/12 78/03/11 あかつき 小松航空プラザ展示
260 JA7341 47G-2 大阪府警 63/03/06 79/01/09 あおぞら2号

参考

警視庁広報センターに展示してある川崎ベル47G-2JA7047のローターブレードの表示

ブレードの自重 : 92.7 Lb
ブレードの重心位置 : M/R マストの中心位置より、STA 92.0in
                                   
前縁側より、コード長の 27.1%
    
この位置に直径2mmぐらいの真鍮の釘が打ち込んであります。ブレードの STA (ステーション)とは、米軍の規定により、マスト中心線よりあらわすと定められています。
 
修理 : JAM(新日本航空整備)現在のJAMCO 1974 OCT  1  実施
 
 
因みに製造番号のプレートは5cm角ぐらいで、付け根付近の表側にあります。

 赤い棒状のものは、ハンドクランクといって、スターターが壊れたりバッテリーがだめになったときに、エンジンのクランク部に差込、エンジンスタートをするために、機体に装備されています。実際に使用したことは、私はありません。
 
北海道に行った人は、冬場、これで先にエンジンを手回ししておくと言ってましたが。挿入するところは、斜めにスリットが入っていて、エンジンが回れば、必ず外れる構造になっていました。              
                                以上宮津厚雄さんから


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川崎ベル47G-2 民間向け    7-6

 川崎ベル47G-2の民間向け生産は84機で、初度引渡の主なユーザーは次のとおりです。

10機   日本農林ヘリコプター 
9機   全日本空輸 
8機   朝日ヘリコプター
4機   関汽エアラインズ 東北産業航空
3機   東北電力 熊谷組 新日本ヘリコプター インペリアル航空 大阪エアウエイズ

 47G-2の生産が始まった1956年には、農林省の後押しもあってヘリコプターによる農薬散布が全国的に広がりはじめ、全日空朝日ヘリに後発の日本農林へリなどが積極的にこれを行うようになりました。 そのピークが1969年と言われており(全日空二十年史)、47G-2の生産期間とほぼ重なります。

・ 事故率4割
  同時に、事故も多発するようになり、例えば次のような記事が、まるで日常的なニュースのように出ていました。
  航空情報1965年6月号 A7401-3参照
  

 下郷資料によれば47G-2の84機中33機がクラッシュしています。必ずしも農薬散布機とは限らないにしても公害問題なども起き始めて、1972年には 大手の全日空が農薬散布から手を引まきました。
 1967年 JA7302の横転事故 幸いにパイロットは軽傷ですみました 紙と木の航空クラブから拝借 

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川崎ベル47G-2A   8-1

 川崎ベル47G-2Aは、G-2の発動機ライカミングVO-435-A1D(200hp)を同じくA1Eに換装して馬力を40hpアップして性能向上をはかり、ローターを金属製にしたものです。その1例を掲げておきます。

47G-24と7G-2Aの性能比較 1967年版日本航空機全集による

  最大速度 巡航速度 上昇限度 航続距離 航続時間 最大離陸重量
47G-2 161km/h 113km/h 3840m 354km 3h 1111kg
47G-2A 169km/h 146km/h 3960m 360km 3.5h 2850kg

 47G-2Aは、1962年から1970年までに32機生産されました。製造番号501から533までのうちc/n526は部品取り機となっているので実在していません。

海上自衛隊の47G-2A

 最大のユーザーは、海上自衛隊の8機で、このうちc/n522 海自8751は砕氷艦ふじに搭載されたほかは、鹿屋航空基地の第211教育航空隊で教育訓練にあたりました、

製造番号 海自ナンバー 登録年月日 用途廃止年月日  
522 8751 65/07/30 95/12/14  
523 8752 65/08/28 81/07/10 × 安城市総合運動公園展示
528 3753 69/02/21 83/07/23 鹿屋航空基地史料館展示
529 3754 69/11/19 84/07/04  鹿児島県串良町平和公園展示
530 3755 69/12/13 84/05/21  
531 3756 69/11/12 86/01/31  
532 3757 69/11/15 85/05/13  
533 3758 70/11/27 87/12/04  

民間の47G-2A

川崎ベル47G-2Aの民間向け生産は26機で、初度引渡の主なユーザーは次のとおりです。

7機   西日本空輸(九州電力の関連会社) 
4機   朝日ヘリコプター 中日本航空
2機   大阪エアウエイズ 日本農林ヘリコプター

 47G-2Aの民間機も14機がクラッシュしており事故率は5割に達しています。

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 日本におけるベル47各型式の主な相違点

各型式 製造会社 発動機 馬力 ローター 尾部 燃料タンク 搭乗人員
 ベル47D ベルエアクラフト フランクリン6V4-200-C32 200 木製2翔   1個 29ガロン 2名
 ベル47D-1 ベルエアクラフト フランクリン6V4-200-C32 200 木製2翔   1個 29ガロン 3名
 川崎ベル47D-1 川崎機械工業 フランクリン6V4-200-C32 200 木製2翔   1個 29ガロン 3名
 川崎ベル47G 川崎航空機工業 フランクリン6V4-200-C32 200 木製2翔 水平尾翼 2個 43ガロン 3名
 川崎ベル47G-2 川崎航空機工業 ライカミングVO-435-A1B 200 木製2翔 水平尾翼 2個 43ガロン 3名
 川崎ベル47G-2A 川崎航空機工業 ライカミングVO-435-A1E 240 金属製2翔 水平尾翼 2個 43ガロン 3名
 川崎ベル47G3B-KH4 川崎航空機工業 ライカミングTVO-435 260 金属製2翔 水平尾翼 2個 55ガロン 4名
 ベル47J ベル ヘリコプター ライカミングVO-435-A1B 220 金属製2翔 水平尾翼  35ガロン 4名
 ベル47J-2 ベル ヘリコプター ライカミングVO-435-B1B 240 金属製2翔 水平尾翼  48ガロン 4名
 ベル47G3B-1 ベル ヘリコプター ライカミングTVO-435T1B 260 金属製2翔 水平尾翼 2個 57ガロン 3名
 ベル47G-4A ベル ヘリコプター ライカミングVO-540-B1B3 280 金属製2翔 水平尾翼 2個 62ガロン 3名
 ベル47G4A  ソロイ ベル ヘリコプター アリソン250-C20 228 金属製2翔 水平尾翼 2個 59ガロン 3名
 ベル47G-5 ベル ヘリコプター ライカミングVO-435-B1 265 金属製2翔 水平尾翼 2個 59ガロン 3名