航空ジャーナリスト協会風°天
1 私の航空史研究の進め方 《その1 史料批判について》
2 私の航空史研究の進め方 《その1 時代区分について》
3 私の航空史研究の進め方 《その1 デジタル年表について》
いやしくも、航空史について描画や執筆を行い、なにがしかでも報酬を得ているセミプロの皆さん、是非ともこの論文を熟読してください。自らの研究作法を振り返ってみて、俺もその程度のことはしていると堂々と言え
るセミプロが何人いるでしょうか。
佐伯がそこまで極論する理由を述べておきます。
1 私の航空史研究の進め方 《その1 史料批判について》
1-1 準公式資料の史料批判
海戦史で、しばしば引用されるモリソンのU.S.
Naval Operations
WWUのVol.10で大西洋対潜水艦作戦で、アメリカがドイツの暗号を解読していた事実が全く書かれていないそうです。何故なら、モリソンの執筆時には極秘扱いで、解禁されたのは出版18年後だったからであり、我が海上自衛隊も古い記述の本で一生懸命に勉強していたと。
準公式資料の危うさ、山内さんの調査で、初めて知る事実です。
1-2 公式資料の史料批判
米海軍省がマル秘で週1回発行していた航空機配備などの文書の中に、以前の内容そのままで表紙だけ変えているものがあるそうです。山内さんがそれをもとにリストを作っていて、あれっと?となったのです。機密保持のためのなのか、多忙な所管機関の手抜きなのかは分かりませんが、
そのまま間違って引用されかねません。それを見つけたのは多分山内さんだけでしょう
。自分でリストを作っているからわかる事実です。
1-3 各種航空機マニュアルの活用
山内家の書庫は、航空機マニュアルだけでも棚が落ちそうなほど詰まっています。マニュアルの重要性は今更いうまでもありませんが、或る航空機について1冊保有して威張っている訳にはいきません。
法律の附則に改正年月日があるように、その航空機に改良改造を加えた都度発行される差し替えページをきちっと整理していて、はじめてその機種の全貌をつかむことができます。
1-4 運用関係史料の活用
隊長らの自画自賛が含まれやすい部隊史よりも、戦闘報告書など運用関係の史料が有用であり、それも、戦闘が行われた時期の様々な技術や戦法を知らなければ、十分な活用ができないと山内さんは強調します。
2 私の航空史研究の進め方 《その2 時代区分について》
アイゼンハワー政権下で、核搭載機として運用された艦載機が、ケネディー政権になると通常爆弾やロケット弾のハードポイントを増設されたりしています。航空機搭載電子機材のアナログ機器からデジタル機器への移行など時代区分の理解の必要性を豊富な例で解説してあります。
3 私の航空史研究の進め方 《その3 デジタル年表について》
論より証拠、山内研究室のパソコンを見てもらいましょう。
史資料を入手次第、下のパソコンに必要事項を書き込み、必要に応じて上段の2台の17インチディスプレイで連続している年表リストを更新します。
デジタル年表は次の情報を基本として色分けや塗りつぶしで変化を持たせてあります。
1 航空隊の線表
2 航空隊の使用機種の線表
3 航空隊の月次装備機種別装備機数、上級部隊名、搭載空母又は所在基地名
4 航空隊所属機、各機の配属状況
5 その他の様々な情報
また、既存の書き込みと矛盾するものも出てきて備考欄も必要です。
上段の画面をプリントアウトしたら何十メートルもの用紙が必要でしょう。
見て聞いて、気が遠くなりそうなコンピューター作業です。彼は、眠気を催うさないように立って作業をしています。また、
一旦消えたら復元はほぼ不可能な膨大且つ重要な資料ですから、遠出をするときには、コピーしたSDを必ず持ち歩いていると聞いています。
セミプロの皆さんが雑誌に書いたり、本を出版したりした内容について、山内PCの中に?マーク付きで備考されているものが随分あるのではないでしょうか。当インターネット航空雑誌ヒコーキ雲でもその一部は紹介済みです。T83やQ010など
終わりに
米海軍・海兵隊航空史研究をライフワークとする山内秀樹さんの研究、世界中の図書とネットを通じてこれほどの基礎資料を収集し駆使している人物はいないと思います。山内さんが書く米海軍・海兵隊航空の記事は十分に信頼に足るものと、お分かり頂けましたか。
航空ジャーナリスト協会の会員は、ひとかどのジャーナリストをもって任じておられるのでしょうから、この機会に、俺もこの程度のことはしているぞ、無批判に二次資料の孫引きなどしていないぞと
自信のある方には、反論をお寄せ頂きたいもので。
・ 純アマチュアはどうするか
じゃあ、純アマチュアのヒコーキマニアはどうなのかというと、例えば、大阪彩雲会の例会を拝見しますと、工作方法の意見交換は勿論ですが、塗装などについて史資料が持ち込まれ、あちこちで議論が交わされ、そこに必ず山内さんの姿があって、ライフワークから取り出した蘊蓄が披露されているようであります。
不肖、インターネット航空雑誌ヒコーキ雲は、殆ど航空音痴に近い私の制作編集ですから、頂上(山内研究のレベル)が見えない山の麓をうろうろしているような状態、無批判な孫引き、孫々引きは毎度のことであると自覚しています。
よって、ミスを見つけたら直ちに挨拶抜きでメールしてくださいと毎月のように呼び掛け、修正すべきは手早く修正をと心がけているのであります。
そして、だいたいが画報的なサイトになっていますので、画像を見る人が、そこから様々な情報を読み取って頂けたらと願いながら編集をしているのであります。
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