川村保敏氏談
長崎航空は、1967年11月30日に定期路線部門を全日空に譲渡し、本機は、オーストラリアのフライ
ングドクター機として売却が内定しましたが、先方が船舶輸送でなく、空輸を希望したため、これに応ずる操縦士が
おらず破談になりました。このため、長崎市役所に100万円で売却交渉し、70万円で折り合い、長崎水族館に展示され
ました
。
長崎航空では、定期路線部門の廃止で操縦士と整備士に余剰がでたのですが、当時は各社が奪い合いの状況であり、この小型機を島伝いでオーストラリアまでフェリーすることに応じるパイロットは皆無でした。
新 撮影1964/11/23 大阪国際空港 北川喜一
株式会社大田計器製作所で分解整備し、航空法第17条第3項による確認を行って長崎航空に引渡された燃圧計予備品です。1967年11月30日に定期路線を全日空に譲渡して旅客機を処分した際に、不要品として社員に渡されたもののようです。 提供:川村保敏氏
引渡し時の状態 ビニール袋にシリカゲルを同梱し針金で結んであります。
SMITH社の銘盤
大田計器製作所のシール 1965(昭和40)年11月
有効期間は1965/11/30〜1968/11/29までですが、ダブは1958年5月に用途廃止されたので、この計器が使われることはありませんでした。
航空法第17条第3項
航空機安全確保のための重要な装備予備品について、大臣の認定を受けたものが製造や修理を行い、基準適合の確認を行うことができるというもの。長崎航空は、もっぱら大田計器を使っていたそうです。
○ 希少資料
長崎航空デハビランドDH-104ダブの燃圧計予備品が出てきました。アナログ航空計器は米軍放出品がたくさん出回っていますが、MADE
IN ENGLANDの計器は希少です。 しかも、航空法に基ずく検査の確認票が付いて、シリカゲル(乾燥剤)を入れたビニール袋のままというのも、殆ど例のない骨董品ということができます。 長崎航空の解散処理に当った川村保敏さんが保管していたもので、これは、歴史的科学技術文化財として然るべき機関に引き取って貰いたいと考えています。
○ 予備品番外 門司港に水没したDC-3のエンジン
長崎航空の定期路線撤退後のDC-3についてはJA5043に触れていますが、川村さんが台湾Winner
Airwaysへ売り込んだ際に、予備のR-1340エンジンを門司港から積み出す時に、運搬業者が誤って海へ落としてしまったそうです。そのために、Winner
Airwaysから随分叩かれて苦労が倍加したとのことです。
さて、門司港岸壁付近にはまだ埋まっているでしょうかね。それとも改修工事の浚渫で発見され処分されてしまっているでしょうか。これも航空ロマンのひとつです。