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航空歴史館技術ノート

掲載12/03/07
追加12/03/08


ベンチュリー管が4本も付いている川崎KAT-1 その働き

旋回傾斜計について
米海軍の教育映画から

A4413-14 岐阜県  各務原市
       Kakamigahara Aearospace Science Museum, Kakamigahara City, Gifu Prefecture
 

ベンチュリー管が4個も付いている川崎KAT-1 その働き

 成田の航空科学博物館ボランティアのにばさんから、岐阜へ行くので特に希望はないかとお誘いがあったので、川崎KAT-1には、胴体横に2本、胴体下に2本の計4本もベンチュリー管があるので、それぞれがどんな働きをするのか調べてきてほしい」とリクエストしました。

かかみがはら航空博物館では、ボランティア共通仲間のよしみで、小山澄人さんが専門的な眼で案内をしてくれて、もちろんKAT-1の4本のベンチュリー管についても調べてくれ、にばさんは大層感謝しておりました。

撮影 HAWK
 4本のベンチュリー管
 

 

その結論はというと、にばさんが帰京する前に小山さんが自らのホームページに結論を出してしまったので、当方は二番煎じになってしまいました。


@ 小山さんの報告 

     http://koyama-s.air-nifty.com/kasmv_repo/

A にばさんの報告

 もともとオリジナルの機体には、側面の二本だけであった。二本のベンチュリー管からの負圧の配管をTで接続して二本連結で、前席と後席の水平儀と定針儀の負圧源を確保していた。

 おそらく負圧源が不足したか、その後の改修で、胴体下面に二本の同タイプのベンチュリー管が追加され、同じように二本が連結され後席の水平儀と定針儀用の負圧源とされた。 

 改修後は前席の計器は側面の二本で、後席の計器は下面の二本のベンチュリー管が使用された。 

 以上が小山さんの推論でした。

        帰京後小山さんから来たメールを添付します。    

 KAT-1のベンチュリ管ですが、KAL-1と同じかもしれないとふと思い立って、KAL-1の仕様書(幸い、こちらは手元にコピーがありました)を確認してみましたところ、「計器及航法装備」の要目にベンチュリー管の記述があり、「水平儀、定針儀用に胴体右側に2個あり」とありました。

 両機とも同時期に同じ設計製造チームで作られていますからKAT-1のものも水平儀、定針儀用で間違いないと思います。ちなみにKAL機は-1型、-2型ともにベンチュリ管の装備数は
2個です。

 KAT-1との相違はタンデム複座か並列複座くらいです。後から2個追加されているところからすると、前後共通では何か具合が悪かったのかもしれません。

2012/03/08 旋回計の動力について

・ 質問 にがうりさんから

 小山さんのKAT-1ベンチュリー管は図面上では水平儀と定針儀用とありますが、当時の通常はさらに旋回計(ターン&バンク)もベンチュリー管から引いてるハズです。

 もし図面上、旋回計がなければ何をサクション源としているのか?あるいは特別に旋回計のみは電気式ジャイロだったのか?の疑問が湧きますね。

 
・ 回答 小山さんから

 KAT-1の旋回計について回答します。

 当該機の計器系統図は返却してしまい手元にないので、再度確認してみないとなんともいえませんが、計画時の資料をみると、旋回計は「電気式24VDC」とあります。

 KAL-1KAL-2の仕様書にも旋回計は電気式と記述されていますので、KAT-1も同様であったと考えます。

 もっとも、KAT-1は航大納入後にいろいろと手を入れられているようなので、運用中に真空式の旋回計に換えられている可能性も無きにしもあらずです。

  ちなみに、現在の展示では、真空式の旋回計が付いていますが、オリジナルかどうかは不明です。(前後席で異なる型式の旋回計が付いています)

 これは用途廃止後に計器の大部分が教材への転用か?盗難にあったのか? 失われてしまっており、三保か滝川での展示時点でその殆どが類似器に置き換えられてしまっているからです。

 塗装と同様、これら計器も各務原の復元時にオリジナル状態に戻されてはおらず、滝川から持ってきてそのままの状態になっています。

現状の前席計器盤 撮影2012/03/04 にばさん


定針儀と水平儀                           旋回傾斜計
   


日替わりメモ2012/03/08

 1952〜53年当時の川崎重工はKAL-1を開発し、ベル47も手掛けていたので計器の選定や入手にさほど困難はなく、旋回計は最新の電気式を採用したということなのでしょうか。当時の常識としては、ジャイロ(ベンチュリー管からの負圧作動)だったと思うのですが如何でしょうか。
 やや年代がさかのぼるかもしれませんが、米海軍の教育映画によるTurn and Bank Indicator (旋回傾斜計)の原理を紹介しておきます。






日替わりメモ2012/03/09  HSC−Mさんからメール

 KAT-1のベンチュリー管で盛り上がっていますが、航空機の耐空性(安全性)の視点からひと言。

 実際に、水平儀等の計器に依存しなければ飛行困難な状況で、水平儀、定針儀、旋回計(ターン&バンク)の動力源が一度に失われると、飛行不能になります。そこで、水平儀、定針儀を空気式にした場合は、旋回計(ターン&バンク)は電気式というように、計器駆動の動力源を独立させ、飛行安全を確保します。 

 この考えは昔も今も同じですから、水平儀、定針儀をベンチュリー管に接続して空気で駆動した場合、旋回計(ターン&バンク)は電気で駆動が正解と思います。 

 こうしておけば、仮にベンチュリー管に、鳥がぶつかって壊れる、あるいは氷結等々の事態になって、水平儀、定針儀が不作動になっても、旋回計(ターン&バンク)の利用により、最低限の計器飛行は可能になるというものです。

佐伯から : なるほどです。ありがとうございました。ただし、「この考えは昔も今も同じ」と言われますが‥‥
 1952(昭和27)年施行の航空法施行規則付属書第一「航空機及び装備品の安全性を確保するための技術上の基準」によりますと、ジャイロ式計器(空気駆動型)という項目はありますが、電気駆動型を示す項目は見当たりません。当時としては、米国基準をそっくり翻訳しただけの基準ですから、電気駆動型を採り入れたのは、日本の役所が口頭で指導していたか、或いは設計現場の独自の判断なのでしょうか。

 下田沖に墜落した全日空JA5025の事故原因がジャイロ計器につながる真空ポンプの片方が故障し、正常な方への切替スイッチの場所が分らずに墜落に至ったと推定されていますが、エンジン駆動のポンプでも、ベンチュリー管と同じようにトラブルが起きる可能性があり、現実に事故が起きた訳ですから以後どのように改善されたのか知りたいです。JA5045参照

OP