佐伯 様
博物館のトレードの記事拝見しました。なかなかのアイデアですね。
UF-XSを変身故郷の神戸新明和工業へとありますが、各務原の博物館が、わざわざ静岡の三保から高い運送経費をかけ、新明和を動員して修復復元し各務原に展示したのは、下記の理由によります。博物館でこの機体を収集し修復を担当した当時者として、その理念を理解してほしくメールしました。
確かに各務原にはUF-XSは関係ないように見えるかもしれません。
しかしそこには深い訳があるのです。この訳が分かれば航空ファンが確実に一人は増えると思っています。風が吹けば桶屋式の説明にも聞こえるかもしれませんが、要は技術の変遷を博物館の飛行機で確認できるようにしたかったからです。
このような技術の変遷を実物の飛行機で展示するのは、わが国の博物館では初めてだと思っています。ではUF-XS展示のねらいは何か。それはわが国がお得意とする高揚力技術の展示です。
もっと詳しく言うとパワードリフト技術,つまり動力式高揚力装置、そうです。飛鳥はパワードリフト技術のかたまりのような飛行機です。そのルーツをたどっていくと次のようになります。
飛鳥→US-1/PS-1→UF-XS→技本高揚力実験機(サフィール改)になり、この機体のすべては各務原の博物館で確かめることができます。展示のねらいとUF-XSの位置付けをご理解いただけたでしょうか?
ちなみに飛鳥からの発展は以下のようになります。ただしパワードリフト技術そのものはUS-1A改へと発展し、パワードリフト技術の制御系としての発展として 飛鳥→BK117デジタル制御→OH-1(設計思想) ただし、その前にP2V−7改VSA→飛鳥の流れがあります。
これらの技術の集成として、現在開発中のCX・PXがあると思いますが、この件については私自身検証しておりません。
人と技術のかかわりや発展の話をすれば長くなりますので。これくらいにします。本来なら、物と場所があるならば下記のような展示をしたいくらいです。
九〇式二号飛行艇
→九七式飛行艇
→二式飛行艇
→UF-XS
→サフィール改
→飛鳥
→US-1/PS-1
→US-1A改
一見して関係のない飛行機がなぜそこにあるのか、その理由が見つかれば、飛行機の見方も変わります。佐伯さんの各種発掘調査が剋目されるゆえんです。
佐伯から : 横山さんありがとうございました。パロディ発想を正面から直視していただいて冷汗三斗、そしてたいへん勉強になり、かかみがはら航空宇宙博物館が目指しているひとつの目標が理解できました。改めて図書室の書評2横山晋太郎 富士T-1初号機の保存復元についてを読み直した次第です。
なお、パロディ発想のついでですが、知覧の飛燕を生まれ故郷の各務原へ、知覧には特攻機の剣をというトレードには賛成の声も来ています。日本航空協会(飛燕所有)、少飛会(知覧展示の斡旋)、国立科学博物館(剣保管)、知覧市長あたりが冷静に話し合ってくれないものですか