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 国産旅客機YS-11の歴史 

[5] YS-11の技術

目 次

1 YS-11の脚ダウンロック表示について

 

@ 脚下げグリーンライトが点かなかったら

 

A 主脚のダウンロック視認

 

 A-1 全日空の主脚ダウンロック表示器開発

 

 A-2 他の旅客機の影響もありました

 

 A-3 フラップの矢印の実機写真

 

 A-4 フラップを出すと見えない その他警報音など  

 

 A-5 ダウンロック表示器クローズアップ ANA系の機体

 

 A-6 ダウンロック表示器クローズアップ  JACの機体

 

 A-7 佐賀空港のJA8733のダウンロック表示 

   A-8  元航空局のJA8709のダウンロック表示 
 

 B 前脚のダウンロック視認

 

 B-1 前脚のダウンロック視認パネル 

 

 ロッキードL-1011の事故

 操縦席正面右窓の 雨水除け固定フェンス

 HFアンテナについて

4 防・除氷装置について
 APUについて

1 YS-11の脚ダウンロック表示について     

@ 脚下げグリーンライトが点かなかったら  にばさん

 航空歴史館 技術ノート陸上自衛隊機の黄色文字の中の視認性の話で思い出しました。

 小生が全日空技術部に在籍中、YS−11の主脚のダウンロックの表示器の視認性が問題になり改修することになりました。脚のダウンロックは通常計器板の下のほうにあるグリーンライトを点灯させることで確認されます。

 センターパネル右下方にある脚指示灯
 コウノトリ但馬空港のYS-11 JA8734 全日空  HAWK

 三つのグリーンライトは左から左主脚、前脚、右主脚の下げで点灯する。

 

 


 
万一このライトが点灯しない時には、乗務員が眼で見て確認しなければなりません。


A 主脚のダウンロック視認

 主脚については、飛行中最後部から3番目の窓越しに脚のドラッグ・ストラットについているダウンロック表示器(down locked visual indicator)で確認します。しかし、非常に見難い箇所です。
 

A-1 全日空の主脚ダウンロック表示器開発  にばさん

  全日空商事が売り出しているYS−11ダイキャスト模型は正確にフラップ後縁に黒の↓が記入されています。他社機にはありません。この↓の先にダウンロック表示器があります。

          

航空科学博物館の主脚ダウンロック表示器

 脚柱全体をグレーで塗装しているため、表示器の透明窓も塗りつぶされていた。一箇所だけシンナーで拭取って撮影してみた。
撮影2006/06/24  にばさん



3個のシグナルが分かるように修正されていた。

撮影2008/01/01  HAWK

 ダウンロック表示器のオリジナルは、黒と白の構成で、ロックが入れば黒の外筒の開口部(外筒に一定の間隔で数箇所あけてある)から白が各開口部から見える構造になっている ます。

 しかし、取り付け場所が主翼の下で暗く、視認し難いとの声があり、色を変えてみることにしました。種々検討した結果、黒との対比ではレモンイエローが見やすいということが分かりました。

 そこで、蛍光赤 (ファイアーオレンジ)も候補に加え三色の表示器を実機に並べて取り付け 、乗員から意見を聞いた結果、最も見やすいのがやはりレモンイエローということになりました。この改修案を航空局へ説明し、全機改修を行うとともに、退色の確認の条件付きでしたので、羽田のK1ビルの屋上で1年間の南面暴露試験を行い退色がないことを確認したのです。 

 その後日本航空機製造鰍ゥらオリジナルの白から蛍光赤 (ファイアーオレンジ) に変更するサービスブリテンが発行されたと記憶しています。

 正常にグリーンライトが点灯していれば全く不用のシステムであり、この改修がどの程度役に立ったか定かではありません が、バックアップシステムは役に立たないほうが健全に飛んでいる証であり望まれる姿でしょう。整備の仕事が話題にならないほうが皆さんがしっかり仕事をされていることだと思います。

A-2 他の旅客機の影響もありました  にがうりさん

 計器板の脚ダウンロックのグリンライトが点灯すれば問題ないというものの、ターボプロップ時代の電気ものはランプ切れとか電線劣化などによる不灯が結構ありました。

 その時は、ダウンロックを目視確認して安全対策とする訳です。YSは、その安全対策のインデイケーターそのものが見え難 くかったのです。

 他機種にも同じものはあります。バイカウントは、零戦みたいな翼上面に棒状突起が出たり、 高翼のフレンドシップでは客席窓すぐ横にドラッグ・ストラットがあって合マーク(ロックされるとドラッグ・ストラットの塗装ラインが一直線に合う)で簡単に確認できるのです。

 

 にばさん達が色を変える改修を行ったのは、全日空が比較ができるバイカウントやフレンドシップを使用していたからこそで、乗員から苦情が出ましたが、他社ではそれほど問題にしていなかったと思います。

A-3 フラップの矢印の実際 撮影2001/05 大島空港へ最終進入中  JO1RBO

 最終進入中に一枚撮ったのを送ります。肝心の足のロックのサインは、この窓からは見えないですね。カメラは230万画素当時は結構イケましたが、今となっては、やはり荒いしノイズも多いですね。
 

A-4 フラップを出すと見えない その他警報音など  ゆう

  YS-11の主脚についているダウンロックインジケーターは、フラップを出すと窓から見えなくなります。JO1RBOさんの写真では、フラップが20度(アプローチ形態)出ているので、見ることはできません。

 ちなみに、脚を出さずに、フラップを22.5度以上出すと、警報(ブザー)が鳴るようになっています。

 その他の警報音は、ブザーカットボタンを押すことにより止めることができるようになっていますが、脚を出さずにフラップを22.5度以上にした場合の警報は、カットすることができません。

 脚に関連した警報音はもうひとつ、脚を出さずにパワーを絞ると警報が鳴ります。 いずれも、脚を出さずに着陸してしまうことが無いような機構が講じられています。

 YSの脚に関連して参考になればと思います。

A-5 ダウンロック表示器クローズアップ 2006/08/06 コウノトリ但馬空港 JA8734  HAWK

ANA系の機体

 YS-11のダウンロック表示器を撮影しておきました。率直な感想は「こんなので機内から確認出来たのかなあ?」ですね。

 近くに寄れば、黒と黄色に塗り分けた部分がダウンロックの表示と分かりますが、機内からとなると相当に疑問です。今回は機内が公開されていましたから後部のタラップの上からも取ってみましたがよく見えませんでした。光の関係も有るかとは思いますが、常に主翼の下にあって影になる部分ですから。
 後部の座席にも座って窓越しにも見てみたんですが窓が経年変化によって曇ってしまっていたのでやはり判別できませんでした。





ここのYSには、エンジン排気口に鳥除けのメッシュが張ってあります。これは良いことだと思います。

 

A-6 ダウンロック表示器クローズアップ 2006/09/10 鹿児島空港 JA8717  小規模板工房

JACの機体

 先日、ハンガーに入っているJACのYS-11現用機JA8717(と言っても、この撮影の翌日9/11を以って退役したとのことですが・・・)を撮影する機会があり、その際に航空歴史館総目次65の全日空の主脚ダウンロック表示器のことを思い出して、JACではどうなっているのかを撮影してみました。

撮影場所:鹿児島県姶良郡溝辺町 鹿児島空港 ノエビア社格納庫

 JACは、全日空機の蛍光黄(レモンイエロー)ではなく、日航製のサービスブリテンのとおり蛍光赤(ファイアーオレンジ)になっているようです。

  また、全日空機と異なり、フラップにダウンロック表示器を示す矢印はありません。


A-7  佐賀空港のJA8733のダウンロック表示器クローズアップ 
     再塗装整備j完了後 2010/03/23 にばさん


 A-8  元航空局のJA8709のダウンロック表示器クローズアップ    8709
     N462ALとして修復後 2015/05/24  佐伯邦昭

        

後部座席窓から                            開かれた非常扉から
  


B 前脚のダウンロック視認

 前脚については、コックピットの床に開閉できる小さなパネルがあり、開けるとアクリルの透明窓を介してダウンロック表示器の赤線が見え、この赤線が一致していればロックしているという構造 です。

B-1 前脚のダウンロック視認点検パネル
 
  
撮影2006/09/16 かかみがはら航空宇宙科学博物館  同館支援ボランティア 小山

肝心のダウンロック表示(右下写真)は、うまく写りませんでした。


ロッキードL-1011の事故 絵塗師

 ランディングギアのグリーンライトが点かなくて大事故になった有名な事例がありますね。

 1972年12月29日、午後11ごろ。マイアミ国際空港に着陸しようとしたイースタン航空401便(ロッキードL-1011)は、前脚のグリーンライトが点かないため、、クルーがコクピットの床下にもぐりこんで、ロックされてるかどうか目で確認しようとしましたが、暗くてよく見えないので手間取っているうちに、どういうわけか、いつの間にか自動操縦がオフになって高度が下がっていることに気づかず湿地帯に墜落し、乗員乗客176人中101人が死亡する大惨事になってしまいました。

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2  操縦席正面右窓の雨水除け固定フェンス    

 

 有明佐賀空港公園に展示されているYS-11の副操縦席前の窓にワイパーと共に何か黒い物体が付いています。何でしょうか?

    撮影2010/11/15 MAVERIC  インターネット航空雑誌ヒコーキジャーナルから転載
    

回答 元全日空社員

 これは1973年に全日空独自社内改修でYS-11全機に取り付けたもので、他社や官庁機にはありません。

 通常飛行中の雨水はウインドーシールドの下面から上面に流れてワイパーで払われます。ところが右ウインドーシールドは左に比べ雨水が多数の筋状に下面から上面に流れてワイパーを使用しても視界を妨げる傾向がありました。おそらくガラス面の位置や角度の関係と思います。

 当時のYS-11乗員からの要求により、38cm×5.4cmの固定フェンス≫をウイドーシールドの取りつけスクリューに合わせて設置し、テストをしたら雨水を飛散させる効果が認められましたので、YS-11全機に採用しました。

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3  HFアンテナについて   3    

2014/11/07 質問

 全日空から海上保安庁へ引き渡された3機のYS-11を見ると、大阪から名古屋三菱へフェリーされる際の3機のうち、2機に短波のアンテナ架線が見えません。

 それ以前の会社での運用時の写真にもアンテナ架線は見えませんので、短波での送受信をどのようにしていたのでしょうか、ご教示ください。

 因みに、三菱で改修された後は、いずれも架線を標準装備としています。

                                             (全機経歴と写真海上保安庁参照)

@ HFアンテナがある YS-11A-213 JA8780

全日空時代 撮影1973/05/05 東京国際空港 PAPPY

撮影1978/09/01 大阪国際空港 高尾 眞

 


A HFアンテナがない YS-11A-213 JA8762

撮影1978/09/22 大阪国際空港 高尾 眞


全日空時代 
場所不明 撮影1976 CTsuga


B HFアンテナがない YS-11A-213 JA8791

撮影1978/05/02 大阪国際空港 高尾 眞


全日空時代 
大阪国際空港 撮影1977 チャーリーマイク

2014/11/08 回答 元全日空社員

 ヒコーキは、YS-11に限らず使用者側が装備品仕様のメーカー、装備数等の選択をするオプション品目は多数あります。機体メーカーは機体設計段階から、または必要時改修増設が可能のようにあらかじめそのスペース・プロビジョン(装備前提の空間、配線配管可能仕様)です。

 無線通信装備でいえば一般多用のVHF,長距離用HFはラジオ・ラックにどれも装備可能で、YSクラスのHFアンテナ線仕様は機首頭部にマスト用の2個の穴も空いていて、使わない時はメクラ蓋で塞いでます。

 なお、YS時代のHF無線機の周波数は、周波数毎に水晶(クリスタル)を削って使うので、HF使用の海外に飛ぶ時は、途中現地のHF周波数を調べて、専門業者にその周波数に合わせた水晶削りをその都度発注していました。

 上記@の1973年5月の場合は、半年後にエアニューギニーへ引き渡す準備で、航空機短波無線局開設で電波監理局検査や事前試飛行等のために装備していたものと思います。ABは国内路線専用だったために装備していないわけです。

 いずれも、海上保安庁では装備しましたが、他の自衛隊など官庁機も短波が必要な場合が発生するということで、いずれも標準装備だと思います。

 

   

DEICER

4  防・除氷装置について  飛行浪人、にがうり、佐伯邦昭  防・除氷

 

全日空公認 YS-11 JA8707 1/72模型 
20年前 退職の挨拶で東京へ行くボーイング767機内のカタログ販売で衝動買い!
                                                              佐伯邦昭


 

全日空模型の誤り 2014/12/19 

 このJA8707の模型について、全日空OBさんから「偽物をつかまされましたね」とのメール‥

 曰く 「JA8707 c/n2030は生産前期型で防氷装置が違います。主翼前縁と垂直尾翼前縁のデアイサーブーツは付いていません。発売前にOBに相談があったら即座に指摘したのですが(笑)、全日空商事も下請けの製作会社もYSー11には無知だったようです」と。

 尾翼を見ても一目瞭然です。
    
模型はデアイサー ブーツ式
   

   
実物は、ジャニトロ製石油ヒーターによる方式  撮影鈴木博之
   

防・除氷装置の変化

 YS-11の生産時にジャニトロヒーターによる防氷だったのは製造番号1001〜2040号機です。その中で2036号機(JA8672)は、FAAからジャニトロではダメと言われてデアイサーブ−ツへ改修してFAAの形式承認を受けた機体でした。

 ということで、2036号機を除く2040号機までとはジャニトロ式でしたが、以降はブ−ツ式が標準になりました。 ただし、航空局向け2047号機(JA8720)と海上自衛隊向け2058号機(9042)を除きます。

 また、ジャニトロ式の機体がその後中古で転売される相手が米国ではブーツ式への改修が必須でした。

その一例

  JA8661は、全日空からフィリピン エアラインズへ移り、更にミッド パシフィック エアラインズへ移るために全日空整備で2回改装されており、この写真は、フィリピンへの新しい塗装に掛かる前の撮影のようです。
JA8661→RP-C1470  撮影1977/01/23 大阪国際空港 高尾 眞



 ↑には黒いブーツは無く、つまりフィリピンではそれで済んでいたものが、アメリカではFAAがブーツ式でないと認めないので↓のように黒いラバーブーツを取付けています。全日空整備で他の改装と併せて工作したものと思います。
RP-C1470→N107MP 撮影1985/04/06 大阪国際空港 MAVERIC


 

FAAの要求とは

 ジャニトロヒーター式は、ヒーターを左右エンジンの外側と尾翼前の胴体に計3台置いて、暖房熱を翼前縁に通したパイプに送るものですが、それぞれが独立しているため、故障時のバックアップが無いことを指摘されたものです。デアイサーブーツ式は、エンジンから抽出された高圧高温のエアを主翼と尾翼へパイプで送り、ラバー・ブーツ内に分割された空気袋を高圧で膨張・収縮させて着氷した氷を飛散させるもので、片側エンジンが故障しても残りのエンジンで必要量が賄われるので安全というわけです。

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APU

5 APUについて     


 マーチン4-O-4の置き換えとしてYS-11を導入しようとしたPIEDMONT AIRLINESは、世界の旅客機基準から大幅に遅れている仕様を大幅に見直すとともに装備品等に欧米の進んだ製品を採用するように要求しました。その結果生まれたのがYS-11A-200型でした。(経緯はピードモント航空参照)

 要求の一つがAPU Auxiliary Power Unit のオプション装備でした。

 日航製造は、JA8611試作〈準量産〉1号機の左主翼付け根にフェアリングを増設して、エアリサーチGTCP36-16発動機を入れてテストを行いました。航空科学博物館に展示されているJA8611にその姿を見ることができます。

5-1 右主翼付け根側タイプのAPU装備

・ 試作(準量産1号機)

装備テストを行ったJA8611 撮影2004/02/22 航空科学博物館 佐伯邦昭


・ c/n2050 YS-11A-205以降のピードモント航空機その他一部の外国向けの機体

 ― イカロス出版2006年刊旅客機形式シリーズ「日本航空機製造YS-11完全退役」の66ページに、右主翼付け根側タイプのAPUを装備したピードモント航空のカラー写真(引渡前のJA8741で登録時)があります。ヒコーキ雲は残念ながら写真を持ち合わせていません。外国のYS-11で、APU装備が分る写真をお持ちの方は提供してください。― 


・ 海上自衛隊YS-11T-A型

 海上自衛隊は、人員貨物輸送型のYS-11Mの次に導入した電子訓練(機上作業訓練)型のYS-11T型6機にエアリサーチGTCP36-16を標準装備しました。その理由は、P-2Jと同じレーダー機器の電源とするためと言われています。

海上自衛隊 YS-11T-A 6905 撮影2010/10/03 下総航空基地 にがうり

6906 撮影2010/10/03 下総航空基地 にがうり


6903 廃棄後でAPU本体は抜いてあります 撮影2010/07/17 下総航空基地 MAVERIC


参考 海上保安庁機はAPUを装備していませんでした 撮影2010/07/17 下総航空基地 MAVERIC

 


5-2 後方荷物室タイプのAPU

 航空局の飛行試験機は、全機が後方荷物室の中にAPUを設置しました。海上自衛隊と同じように各種検査機器の電源とするためと思われます。

 全6機中、JA8610、8700、8720、8711、8712の5機はYS-11-100型なので、後からAPUを追加したものであり、JA8709は唯一のYS-11-200型ですが、東亜国内航空から譲渡された後にやはり追加したものです。

 

JA8709の場合

後部バッゲージ コンパートメント内のAPU配置

操縦席天井パネルの機長側に特設されたAPUスイッチ 撮影2015/05/24 佐伯邦昭


APU本体 Honeywells GTCP 36-16 撮影2015/05/24 HAWK

同 撮影2015/05/24 佐伯邦昭


高温のガス排出口 
撮影2015/05/24 HAWK

吸気口の場所推定

 


JA8610の場合


JA8700の場合

撮影1989/05/02 鈴木博之  


JA8711の場合

撮影日不明 PAPPY


JA8712の場合

撮影2005/0918 Fuku


JA8720の場合

撮影2006/09/16  東京国際空港 YS45
       

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