A ブレーキとステアリング
ブレーキ
DC-3のブレーキは、両操縦席のラダーペダルを足のつま先で踏んで作動させる。踏み込むとブレーキ用の油圧弁によって下記の
エクスパンダ―チューブへ作動油が流れ、離すと貯蔵タンクへ戻っていく。
ブレーキは、脚を引き込めた時も効く。引込状態でも車輪は半分出ているのでブレーキが必要な場合もあるのだろう。
ステアリング
DC-3のタキシング中のステアリングは、スロットルレバーで左右エンジンの回転を変える(つまり牽引力を変える)のと、ラダーペダルをつま先で強く踏むことで左右のブレーキを効かせて機体をカーブさせる。もちろん方向舵も連動してそれを助けている。
ただしブレーキの乱用でタイヤの損耗をさけるため、できるだけスロットルをうまく使うのが好ましい。
パーキングブレーキ
機体が停止すると、機長席側のラダーペダルを一杯に踏み込み、パーキングブレーキ コントロール ノブ(注)を引上げると両車輪の油圧がロック状態で停止する。地上ではもちろん車輪止めをセットする。
パーキングブレーキの開放は、ペダルを踏み込んでノブを押し戻すことで両車輪のロックが解かれる。
DC-3が採用した2種類のブレーキ構造
世界中で使われたBendix社製のブレーキのうち、FAA specは、DC-3Aにexpandaer
tube brakeを DC-3Cにduo-servo
brakeを示しているが、前者は効きに時間差があるとされ、全日空ではすべて後者を採用した。
1 expander
tube brake
作動油を注入すると布製のエクスパンダー チューブが膨張してシューがドラムに押し付けられ制動する。
2 duo-servo brake
duo-servoが何のことかわからなかったが、duoがデュエットの意味らしいというところから、左図を見るとなるほどである。シューがデュエットで左と右のドラムを押しつけて制動をかける仕組みである。
B 主脚の緩衝装置
作図 にがうり
主脚の緩衝は上図のようにタイヤ両側のオレオ ストラットで衝撃を吸収する方式である。
構造原理はごく一般的なもので、脚柱の外側(シリンダー)が上下に2分され仕切り部に穴(オリフィス)が開いて圧縮空気と油が詰まっており、内側はピストン部でタイヤと連結している。そのピストン・ヘッドのテーパー状のピンがシリンダー仕切り部の穴に入っている。
着陸と離陸の両方で緩衝が働く
着陸では、接地の衝撃で上がるピストンに押されて空気が圧縮され、油が穴から上に流れ込んで脚柱が縮み、衝撃を吸収する。
離陸では、脚柱が急激に伸びてドスンという機体へのショックを緩衝するために、上方室の油はテーパー状のピンにさえぎられてゆっくりと下方室に戻ってくるわけである。
DC−3はオレオ・ストロークが短く、衝撃吸収力はそれほど強いものではなかった。それを助けたのがDC−3特有の大直径、低圧タイヤであった。石崎秀夫さんは、「空気圧の低いバルーンタイヤのために軟着陸ができた」という意味のことを書き残しているが、ゴム風船のようなしなやかさが衝撃吸収を助けたということであろう。「機長のボイスレコーダー」p223より
極東航空のJA5025 撮影1956/11 TIA